専門家によるドライブコラム

初心者のための運転方法(3) -車両感覚を身につけましょう-

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初心者とペーパードライバーの方のための運転術もいよいよ最終回です。
今回は車両感覚について考えてみましょう。クルマが動き出すタイミングや、ブレーキのコツが分かって多少運転に慣れて来ても、狭い道に差し掛かると急に緊張感が高まるという方は多いのではないでしょうか? 細い路地で壁側にボディを擦らないか? 対向車が来たけれど、うまくすれ違う事ができるか?

そんなハラハラする気持ち、良くわかります。歩いている時は肩幅や歩幅を意識しますが、クルマのボディは四隅がどこにあるのかつかみにくいですから、慣れないうちは緊張して当然です。このクルマの大きさを的確に把握する事を「車両感覚」と呼びます。車両感覚は、はっきり言って慣れです。これが決定的な解決方法というのは存在しません。ただし、なるべく早く身に着くようトレーニングするコツはあります。順を追って考えて行きましょう。

左右の車両感覚

まずクルマ左右、つまり幅方向の感覚です。右ハンドルのクルマであれば、ドライバーは右に寄って座っています。ですから右側の間隔は、窓を開けてちょっと覗き込めば、直接目で確認できますね? その習慣が無い方はぜひ直接目で見るクセをつけてください。そしてそのとき慌てずに、ひと呼吸置いて通常のドライビングポジションから、窓越しの壁とフェンダー/壁とサイドミラーがどんな位置関係で見えるかも確認します。

しかし最近のコンパクトカーやミニバンの中には、フェンダーがまったく見えないクルマもあります。その場合はサイドミラーの先端位置意を意識しましょう。

左側は、窓を開けて直接見る事は不可能なので、窓越しに見えるサイドミラーの先端と壁の位置関係に注意します。ミラーはクルマの最大幅です。これ以上飛び出している場所はありません。つまりミラーが通過できる幅があればOKなわけです。そして右側と同様に、このとき窓越しに見える壁と車体の位置関係も確認します。

左右の車両感覚は、人によって時間差はあるかも知れませんが、これを繰り返す事によって確実に養われて行きます。もちろん自信が着くまではゆっくりと、焦らずにやってみてください。

それでも左側の感覚に不安を感じるという方は、事前のトレーニングとして「自分ではもうギリギリ」と思うだけ壁にクルマを寄せて止めて、一度降りてどのくらいの間隔があるか実際に見てみましょう。おそらく思っていたよりもはるかに空いているはずです。これを少しずつ詰めて行くのが車両間隔を養うという事なのです。

前後の車両感覚

前後方向の車両感覚は、左右ほどシビアに考える必要は無いと思います。前後ギリギリまで寄せるシーンは駐車場などに限られますから、すれ違いなどと違って一瞬の判断を求められるような事は稀です。

この場合は、自分で「ギリギリまで寄せた」と思えるところで一度クルマから降りて、実際にはどのくらいの間隔があるのか確認するのも容易です。これを繰り返すうちに、ご自分のクルマの大きさが身に付いて来ると思います。

ボディの大きさが身に付いて来たら、次にタイヤが道路上のどの辺を通っているかを意識するように心がけましょう。そうすると車両感覚はますます鮮明になりますし、ボディは通ったけれど、縁石にホイールを擦ってしまったなどというアクシデントも避けられるようになります。

落ち着いた運転を心がけましょう

最後に、スマートなすれ違いについて覚えておきたいのは、自分を進退窮まる状況に追い込まないという事です。狭い道のすれ違いで困っている人の多くが、道路のいちばん狭い場所で止まっています。ちょっとでも無理かな? と思ったら、必要に応じて後退し、広い場所に移動するのが確実です。

また、最近は車両周辺の状況をカメラで撮影し、ナビ画面などに映し出してくれるモニター機能を備えたクルマも増えています。一定の車両感覚を養う事は運転に必要不可欠ですが、こうした機能を補助として活用すれば、安心感はさらに高くなります。

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コラムニスト 石川芳雄 (モータージャーナリスト)

筆者の写真

初心者の方へ、ドライブの楽しさをお伝えしたいと思います。

私は生活に根ざしたクルマの使い方や、楽しみ方を常に考えていたいと心掛けています。車の免許を取ったばかりの方、また長い間運転をしていない方へ、楽しく快適で安全なカーライフをおくっていただくお手伝いをさせていただきます。

【所属】 日本自動車ジャーナリスト協会理事
【メディア】 「モーターマガジン」など連載多数。
【著書】 「上手いと言われる愛車操縦法」「マイカー洗車術」「クルマ選び、これが目のつけ所」(ベストセラーズ)など多数。

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